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出雲市バイオマスタウン構想 神話の國出雲の新エネルギー関連計画 | 出雲市

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(1)

出雲市バイオマスタウン構想

1.提出日 平成22年3月30日

2.提出者

出雲市産業観光部産業振興課

担当者:課長 小瀧昭宏、主事 嘉本 学

〒693-8530

島根県出雲市今市町70

電 話:0853-21-6541

FAX:0853-21-6838

3.対象地域

出雲市

4.構想の実施主体

(2)

5.地域の現状

(1)経済的特色

産業別就業者の割合をみると、第 3次産業

が6割を超え、第2次産業は約3割、第1次

産業は約 1 割となっている。昭和 60 年から

20年の間に、第1次産業はほぼ半減、第2次

産業は約8割に減少、第3次産業は約1.2倍

に増加している(図表1参照)。

肥沃な出雲平野を擁する本市では、水稲を

はじめ、ぶどう、いちじく、柿などの果樹や、

いも、きゅうり、ブロッコリーといった野菜

等の栽培が行われているが、農業産出額は減少し、平成 18年には106.5 億円となっている。

農業産出額を耕種別にみると、米が35.7億円と全体の33.5%を占め最も多く、次いで果実が

21.8億円(20.5%)、野菜が16.7億円(15.7%)、花きが3.1億円(2.9%)となっている。

また畜産では、乳用牛が12.4億円(11.6%)と最も多く、次いで肉用牛が7.7億円(7.2%)、

豚が2億円(1.9%)となっている(図表2,3参照)。

■図表4. 家畜飼養頭羽数 ■図表5.作付・栽培面積

肉用牛 (頭)

2歳以上 2,842 水稲 2,467ha

2歳未満 925 ぶどう 164.4ha

計 3,767 柿 55ha

乳用牛 (頭)

搾乳用牛 1,970 いちじく 21.1ha

肥育牛 4

子牛 46

計 2,020

豚 (頭)

肉豚 3,103

種雌豚 255

計 3,358

採卵鶏 (羽)

成鶏 43,000

雛 8,000

計 51,000

資料:平成 年 月家畜飼養状況調査

資料:JAいずも資料

種苗・ 苗木 類・ その他

1.5% 肉用牛

7.2%

工芸農作物 0.7%

花き 2.9%

果実

20.5%

その他畜産物 0.6% 鶏

1.4% 豚 1.9%

加工農産物 0.1%

乳用牛 11.6%

い も類 1.3%

麦類 0.4% 雑穀・ 豆類

0.8% 野菜

15.7% 米 33.5%

資料:島根県農林水産統計年報

資料:第55次島根県農林水産統計年報 172.5 163.6 127.5 110.9 106.5 0 50 100 150 200

H2 H7 H12 H17 H18

( 億円)

16.2% 12.7% 10.8% 8.5% 8.4% 32.8% 33.8% 32.9% 31.5% 27.0% 51.0% 53.4% 56.2% 59.3% 63.1% 0.1% 0.1% 0.7% 1.4%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

S60 H2 H7 H12 H17

第1 次産業 第2 次産業 第3 次産業 分類不能

資料:国勢調査

■図表1.産業別就業者割合の推移

■図表2.農業産出額の推移 ■図表3.耕種別農業産出額の割合(H18)

全体106.5億円

(3)

3,199 3,382 3,190 3,106 2,790 3,351 3,482 2,167 2,655 3,028 2,744 2,774 2,593 2,420 0 1,000 2,000 3,000 4,000

H3 H6 H9 H11 H14 H16 H19

( 億円)

0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 ( 事業所)

商品販売額 事業所数

林業については、林野面積35,324haのうち、国有林は914ha、民有林は34,410haとなって

おり、現況森林面積は35,237haとなっている。また、森林蓄積は704万3,500m

3

、そのうち

人工林は413万500m 3

、天然林は291万3,000m 3

となっている。林家数をみると、2000年に

は3,323戸であったが、2005年には3,116戸に減少している。保有山林面積規模別林家数をみ

ると、約6割(1,892戸)は保有山林面積が3ha未満、約2割(565戸)は3~5ha未満、約1

割(402戸)は5~10ha未満となっている(図表6,7参照)。

■図表6.林野面積等(H17) ■図表7.保有山林面積規模別林家数(H17)

林野面積 35,324ha

国有林 914ha

民有林 34,410ha

現況森林面積 35,237ha

森林蓄積 7,043,500m

3

人工林 4,130,500m

3

天然林 2,913,000m

3

商業については、平成11年以降、事業所数、年間商品販売額ともに減少し、平成19年には

事業所数2,167、年間商品販売額は2,790億円となっている。事業所数は県庁所在地である松

江市に次いで2番目に多く、比較的規模の大きい商業施設が市街地に集積し、大規模小売店舗

数は25店舗となっている(図表8参照)。

また、出雲大社に象徴される「出雲」の名は全国的な知名度を誇り、観光産業は本市の基幹

産業のひとつとなっている。出雲大社には毎年200万人を超える観光客が訪れており、平成20

年、本市の観光客入り込み数は約865万人となっている。

なお、市内には温泉・温浴施設が多数存在し、近年では毎年 80 万人を超える人がそれらを

利用している(図表9参照)。

規模 林家数 割合

1~3ha 1,892戸 60.7%

3~5ha 565戸 18.1%

5~10ha 402戸 12.9%

10~20ha 178戸 5.7%

20~30ha 37戸 1.2%

30~50ha 17戸 0.5%

50~100ha 15戸 0.5%

100~500ha 10戸 0.3%

500ha以上 0戸 0.0% 合計 3,116戸 99.9%

施設名 H20入込数(人)

出雲ゆうプラザ 31,531

湯元楯縫割烹温泉ゆらり 267,147

すさのおの郷ゆかり館 89,324

多伎いちじく温泉 200,832

華蔵温泉 2,317

小田温泉 6,460

マリンタラソ出雲 111,897

湖陵温泉 55,042

クアハウス湖陵 49,667

出雲健康公園(出雲ドーム含む) 31,490

上記合計 845,707

資料:2005年農林業センサス

資料:2005年農林業センサス

3 0 ~5 0 h a 0.5%

5 0 ~1 0 0 h a 0.5% 2 0 ~3 0 h a

1.2%

5 ~1 0 h a

12.9% 1 0 ~2 0 h a

5.7%

1 0 0 ~5 0 0 h a 0.3%

3 ~5 h a 18.1%

1 ~3 h a 60.7%

(4)

(2)社会的特色

平成17年3月22日、出雲地区2市4町(出雲市、平田市、佐田町、多伎町、湖陵町、大社

町)の合併により、現在の出雲市が発足した。

本市には、東西に国道9号、平田町から大社町を経て出雲市街地方向に国道431号、出雲市

街地から佐田町方向に国道184号が通っている。また、周辺都市との連携を図るため、山陰自

動車道とそのアクセス道路の整備が進められ、平成21年11月には山陰自動車道斐川-出雲間

が開通し、県庁所在地である松江市までの所要時間は約34分となっている。鉄道は、JR山陰

本線と私鉄一畑電鉄があり、出雲市駅を発着する路線バスや高速バスも運行している。

また、市内には比較的大規模な病院が多数存在し、島根県立中央病院、島根大学医学部附属

病院、市立総合医療センターは島根県の地域医療拠点病院に指定されている。

環境に関わる取組としては、出雲市総合振興計画(21世紀出雲のグランドデザイン)におい

て「21世紀環境先進都市の創造」を基本方策のひとつに掲げ、循環型社会の構築を推進するこ

ととしている。また、「21世紀産業都市の創造」に向けて、新エネルギーの利用促進を図るだ

けでなく、環境と調和した産業振興を図るため、風力、木質バイオマスなどの再生可能エネル

ギーを活用する新エネルギー関連企業の立地を促進している。中でも、平成21年4月に、日

本最大級の発電能力を誇る新出雲風力発電所が稼動したところである。

これまでに、環境基本計画、地域新エネルギービジョン、次世代エネルギーパーク整備計画、

地域省エネルギービジョン等、環境やエネルギーに関する計画を策定し、事業化を進めており、

バイオマスの利活用に関しては、廃食用油の回収・BDF(バイオディーゼル燃料)の製造、

ごみ焼却熱を有効利用した廃棄物発電、食品残さや浄化槽汚泥等のたい肥化を行っている。ま

た、民間企業との協力・連携により、休耕田を活用した多収穫米の試験栽培やバイオエタノー

ル製造に向けた検討、木質バイオマスのガス化発電試験等を行っている。

また、市民の環境やエネルギー問題に対する意識の向上を図るため、理科学習・生涯学習の

場として利用されている「出雲科学館」や、自然エネルギー・地球環境等について学習するこ

とができる「風の子楽習館」等を活用し、幅広い世代の環境学習・環境教育を推進している。

なお、本市では水素社会の到来を視野に入れ、“再生可能エネルギーから製造した水素を利

用する「水素社会」の構築”を目指し、その一環としてバイオマスの利活用を推進している。

今後、これまでの取組を継続・発展させ、様々な事業者と協働し、バイオマス利活用の一層の

推進を図る。

(5)

出雲市

(3)地理的特色

本市は、島根県の東部に位置し、北部は島根半島、中央部は出雲平野、南部は中国山地で構

成され、東西約30km、南北約39kmの範囲に広がり、面積は543.48km

2

となっている。

地目別にみると、山林が40.1%を占め、田・畑が14.6%、宅地が5.4%、その他(原野含む)

が39.9%となっている(平成21年度固定資産税概要調書より)。

人口は146,307人、世帯数は47,111世帯となっており(平成17年国勢調査より)、昭和50

年以降増加傾向で推移してきた人口は平成17年には減少に転じ、世帯数は増加が続いている。

気候については、日本海型気候に属し、年平均気温は14.4℃、降水量は1,695.0mmとなって

いる。降水量は6~7月及び9月では200mmを超えて多く、冬季では120mm以下となっている

(平年値)。

松江市 東出雲町 安来市

奥出雲町 雲南市

飯南町 大田市

斐川町

美郷町

邑南町 川本町 江津市

浜田市

益田市

津和野町

吉賀町 隠岐の島町

海士町

知夫村 西ノ島町

■図表11.地勢図

■図表10.位置図

(6)

(4)行政上の地域指定

行政上の地域指定は下表に示すとおりである。

区分 地域

都市計画法 都市計画区域 出雲都市計画区域(24,824ha)

農業振興地域の整備に関する

法律

農業振興地域

出雲市内(総面積 47,509ha、農用地面積

6,438ha)

山村振興法 振興山村地域

鰐淵、田儀、富山、乙立、窪田、東須佐、 西須佐

特定農山村地域における農林

業等の活性化のための基盤整

備の促進に関する法律

特定農山村地域

北浜、西田、鰐淵、鵜鷺、日御碕、荒木、 園 、 稗 原 、 朝 山 、 乙 立 、 久 村 、 多 岐 、 田 儀、富山、窪田、東須佐、西須佐

過疎地域自立促進特別措置法過疎地域 旧多伎町、旧佐田町

辺地に係る公共的施設の総合

整備のための財政上の特別措

置等に関する法律

辺地指定地域

見々久、坂浦、塩津・美保・釜浦、相代、 上 鹿 園 寺 、 畑 ・ 別 所 、 猪 目 、 鰐 淵 、 十 六 島 、 野 郷 ・ 地 合 、 三 代 、 吉 野 、 城 川 、 橋 波、佐津目、毛津、小田、畑村、日御碕、

鵜鷺(20辺地)

島根県中山間地域活性化基本

条例

中山間地域

出 雲 市 内 の 特 定 農 山 村 地 域 、 過 疎 地 域 、 辺地指定地域及び湖陵町西浜地域

発電用施設周辺地域整備法 電源地域 出雲市全域

半島振興法 半島振興対策実施地域 旧平田市、旧大社町

農村地域工業等導入促進法 農村地域工業等導入地区 長浜、下古志、吉原

企業立地の促進等による地域

における産業集積の形成及び

活性化に関する法律

集積区域 出雲市全域

自然公園法 自然公園区域 大山隠岐国立公園 島根半島西部地区

島根県立自然公園条例 県立自然公園区域

(7)

6.バイオマスタウン形成上の基本的な構想

(1)地域のバイオマス利活用方法

本市では、これまでに、ごみ焼却熱を有効利用した廃棄物発電や廃食用油のBDF変換利用、

家畜排せつ物や剪定枝・刈草及び下水・し尿汚泥のたい肥化利用、製材残材や建設発生木材の

チップ化利用や調湿材としての商品化、また、稲わらやもみがらは、家畜敷料・飼料としての

利用やたい肥化利用が行われており、これら既存の取組を継続・拡大することがバイオマス利

活用を進めるうえで重要である。

あわせて、面積の約4割を山林が占める本市では、林業振興や山林保全及び環境対策を進め

るためにも、木質バイオマスの利活用を進めていくことが有効である。

また、廃棄物発電については、施設の負担を軽減させ、発電効率を高めるためにも、水分を

多く含む生ごみを減らすことが求められる。また、現在、事業所から排出される食品廃棄物は、

隣接の松江市など市外で処理されているものも少なくないため、市内での利活用を検討する必

要がある。

そこで、既存の取組を継続・拡大させるとともに、市内に賦存する様々なバイオマスの中で

も、特に、林地残材などの「木質バイオマス」や生ごみなどの「食品廃棄物」の利活用を推進

することとする。

具体的には、「①家畜排せつ物、製材残材、剪定枝、稲わら等のたい肥化と有機農業への活

用」、「②廃食用油からBDF変換利用」、「③林地残材の利活用」、「④食品廃棄物のたい

(8)

①家畜排せつ物、製材残材、剪定枝、稲わら等のたい肥化と有機農業への活用

家畜排せつ物、製材残材及び出雲エネルギーセンターに持ち込まれる剪定枝等は、佐田総

合資源リサイクル施設(㈲エコプラント佐田)等において「たい肥生産」の原料として利用

され、「たい肥」は田や畑に施用され有機栽培に供されている。そして、有機系のたい肥で

生産された作物は、「有機農産物」として付加価値を得て、家庭に届けられている。

現在、これらのバイオマスは高い利用率であるため、今後も現行の循環システムを維持し、

利用の継続を図る。

また、事業系の食品廃棄物については、一部でたい肥化利用がされているものの、ほとん

どが焼却処分されているため、分別の推進や効率的な収集システムの構築を図ることで、た

い肥化利用等の拡大を図る。稲わらやもみがらは、家畜敷料・飼料としての利用やたい肥化

利用及び農地への施用が行われているが、このうち、稲わらは、稲の収穫作業の方法や効率、

収集方法の問題からバイオマスとしての利用率が低い。しかしながら、大量に存在し、また

良質なバイオマスであることから、たい肥、飼料としての利活用の拡大をめざし効率的な収

集システム等を検討していく。

なお本市は、“トキ”の国内分散飼育地(環境省)に指定されており、有機系廃棄物のた

い肥を活用した有機農業を推進することで、“トキをシンボルとした環境にやさしいまちづ

くり”を目指すこととする。

佐田総合資源リサイクル施設等

有機農産物 家畜排せつ物+

家畜敷料(木くず)

たい肥施用

乳用牛・肉用牛 肉豚 ・採卵鶏

製材残材

剪定枝

運搬

有機農業

安全・安心な農地

“トキをシンボルとした 環境にやさしいまちづくり”

家畜敷料・飼料

(9)

②廃食用油からBDF変換利用

現在、市内 48 箇所のリサイクルステーションにおいて、家庭から排出される廃食用油を

回収し、BDFに変換して、市バスや公用車(トラック)の燃料として利用している。

今後、回収量の増加を図るため、リサイクルステーションの増設や事業所から排出される

廃食用油の回収についても検討する。

なお、公用車のうち、BDFが利用できる車には限りがある。そのため、BDF製造量が

公用車での利用量(必要量)を超える場合は、市民、事業者へ利用拡大を図るとともに、B

DFの利用方法についての検討を行う。

③林地残材の利活用

利用間伐や主伐の際に発生する林地残材(末木、トンコロ、枝状など)は、需要がない

ため搬出されずに林地に放置されている。これらの林地残材は、作業道の整備など搬出し

やすい環境づくりを進める一方で、需要先が確保され、搬出・加工に見合う収入が得られ

れば利活用を図ることができる。

市内の主な林業事業者としては、現在、出雲地区森林組合と製紙用チップ事業者がある。

森林組合では、森林整備としての間伐(切捨間伐、利用間伐)、広葉樹の主伐を行っており、

また、製紙用チップ事業者は、広葉樹・針葉樹の主伐を主として行っている。

平成 22 年度から中国電力三隅火力発電所において林地残材を用いた木質バイオマス混

焼発電事業が計画されているところであるが、市内の事業所においても三隅発電所にチッ

プを供給する準備が進められており、また、三隅発電所以外へのチップ供給も模索されて

いるなど、林地残材の利用を促進する契機になるものと考えられる。

今後の林地残材の利用促進にあたっては、作業道をはじめとした収集のための環境整備

を図るとともに、木質チップなどの利用を喚起し、その需要に対応できる供給システムを

構築する必要がある。

廃食用油

市バス BDF

BDF精製 プラント リサイクル

ステーション

製造量によっては 市民、事業者へ利用拡大

(10)

a.林地残材の搬出環境及び収集システムの整備

林地残材を搬出するためには、作業道、集積場所及び作業道までのアクセス道路の整備

など搬出しやすい環境づくりによる搬出コストの低減を図る必要がある。また、必要な林

地残材を確保するためには、利用先、利用目的及び利用量などの需要を把握し、必要な林

地残材の供給が可能な体制づくりと、林地残材を資源として利活用させるという林業関係

者の意識醸成が不可欠である。

出雲地区森林組合や林業関係者と市が連携してこうした取組を進めることにより、利用

間伐や主伐で発生する林地残材の収集システムの確立を目指す。

b.供給システムの構築

林地残材の収集システムを確立する一方で、木質チップなど様々な需要に対応するため、

安定的かつ安価な供給システムづくりが必要である。出雲地区森林組合と製紙用チップ事

業者は、木質バイオマスをチップに加工する施設を有しており、三隅火力発電所への木質

チップ供給も予定している。この取組を契機として、事業者との連携のもとで必要な林地

残材の量を確保し、安定的かつ安価な供給が可能となるシステムの構築を目指す。

c.木質バイオマスの利用の拡大

ア.公共施設への木質チップボイラの導入

木質チップの需要を創出するためには、木質チップボイラの導入を進める必要がある。

島根県内においても、木質チップボイラを温浴施設へ導入した例がある。これは、温浴

施設は熱需要が大きいこと、年間を通じて安定的な熱需要があるためである。

本市においても、温浴施設やプールを併設した施設が複数あり、導入コスト、運営コ

ストを検討したうえで積極的に木質チップボイラの導入を推進する。

直接燃焼 森林

林地残材・剪定枝 運搬

チップ等加工場

チップ

チップボイラ

熱需要施設 ・温浴施設 ・医療施設 ・福祉施設

等 ・農業ハウス

固形燃料化

ペレット

ペレットストーブ ペレットボイラ

農業ハウス、家庭、事業所

ガス化プラント

木質バイオマスガス化プラント (ブルータワー)

ガスエンジン発電 ガスタービン発電 ガスから水素製造

~燃料電池利用 等

将来技術

直接燃焼

ガス化 直接燃焼

(11)

イ.農業ハウスへの木質チップボイラの導入

本市の特産品のひとつである「ブドウ=デラウェア」の生産は、収穫と出荷時期を調

整するため、ビニールハウス内を加温して行っている。加温には重油ボイラが利用され

ており、市内全体で 4,400,000Lの重油・灯油が消費されている。重油ボイラへの燃料

供給は、JAいずもが重油基地を置き、パイプラインで各農家のハウスへ配送している。

現在の重油ボイラのシステムは完成しており、木質チップボイラに変換することは容易

ではないが、化石燃料使用は価格の変動を受けやすく、安定的で安価な燃料を使うこと

でデラウェアの生産コスト低減を図ることができる。

市内には、デラウェアのハウスをはじめとして、花き、しいたけ、その他施設野菜の

農業ハウスが多数設置されている。JAいずも、島根県農業技術センター及び市が連携

して、木質チップボイラの導入可能性が高いハウスから試験的に導入していく。

ウ.その他の木質バイオマス利用

〔薪・炭化商品〕

木質バイオマスは、化石燃料が普及するまでは、風呂焚きや暖房、調理等に使われ、

生活におけるエネルギーの中心だった。最近、エコロジーな生活が見直され、木質バイ

オマスを生活に取り入れる動きも出てきている。木質バイオマスを「薪」の状態で使う

「薪ボイラ」や「薪ストーブ」などがあり、導入する家庭や事業所も増えてきている。

さらに、市内では、「薪」を燃料にした農業用ボイラの開発も進められている。これらの

燃焼機器の普及を図るとともに、「薪」の需要が拡大すれば、その供給に対応していく必

要がある。

また、市内には、建設発生木材などを炭化し、調湿材に加工して商品化する事業者が

おり、今後、林地残材を製品材料として供給できれば、木質バイオマスの利用拡大につ

なげることができる。

〔ペレット〕

木質バイオマスの利用方法として「ペレット」がある。ペレットは、木を細かく粉砕

したものを圧縮・成型してできる木質バイオマス燃料である。チップに比べて熱量が高

く、形状が安定しているため利用性が高い燃料である。

そのため、チップでは対応できない建物の空調熱(暖房・冷房)や、小規模事業所・

家庭への木質バイオマスの導入を考えるとペレットの利用も想定しておく必要がある。

市内には、ペレットを供給する事業所はないため、当面の利用については市外からの購

入となるが、需要が拡大すれば市内林業事業者による供給体制を整えていくこととする。

d.木質バイオマスのガス化発電

市内には、木質バイオマスから抽出したガスを燃焼させることにより発電を行う実証プ

ラントを民間事業者が設置している。現状では想定していた発電量に至っていないが、当

(12)

④食品廃棄物のたい肥化利用

現在、出雲エネルギーセンターに持ち込まれる可燃ゴミのうち、生ごみ等は焼却処理、剪

定枝はたい肥化利用している。

同センターでは焼却時の熱を利用して発電を行っており、発電した電気は施設内や近隣施

設(島根県花振興センター・花ふれあい公園(しまね花の郷))で利用され、余剰電力は中国

電力へ売電している。しかし、焼却時の熱は 16%程度が電気になっているにすぎず、残る

84%は放熱されている。可燃ごみとして処理している生ごみは水分が多く、助燃用の燃料が

必要となるため、焼却ではなく、別の方法で処理することを検討する必要がある。

そこで、生ごみ(食品廃棄物)の分別収集を行うことで、たい肥化利用の促進を図る。分

別収集を行うにあたっては、モデル地域で実施し、結果の検証を踏まえてモデル地域の拡大

を図る。これにより、効率的な廃棄物処理・発電に寄与するとともに、生ごみのより効率的

な利活用を促進する。

また、現在、事業所(スーパー、市場等)から排出される食品廃棄物は、焼却処分される

か、たい肥化されていてもその多くは市外の業者によって処理されている。このため、市内

でのたい肥化の拡大等を検討する必要がある。

こうしたことから、家庭から排出される生ごみや事業所から排出される食品廃棄物の利活

用を促進することとし、下水汚泥、林地残材などを組み合わせたたい肥化を図る。

なお、将来的には、さらなる循環利用システム構築の検討を行う。例えば、生産されたた

い肥を耕作放棄地や遊休地等に施用し、農地として整え、資源作物を栽培する。さらに、栽

培した資源作物からバイオエタノールを製造する。製造したエタノールは、エタノール混合

ガソリンに利用することが考えられる。また、バイオエタノールから水素をとりだし、燃料

電池のエネルギーとして利用することも考えられる。このシステムの構築については、民間

活力の活用も含め、事業化の可能性等について検討を行う。

可燃ごみ

食品廃棄物

出雲エネルギーセンター (廃棄物発電)

森林 林地残材・木くず

家庭・事業所 下水汚泥

たい肥センター (たい肥化施設)

たい肥生産

バイオエタノール プラント

農業用たい肥 施用

エタノール 製造

エタノール製造 ガソリン車に利用

エ タ ノ ー ル 混 合 ガ ソ リ ン

(E3)の利用(3%混合) 事業所

生ごみ

燃料電池に利用

水素抽出

将来は‥

耕作放棄地

遊休地 等

(13)

a.収集システムの構築

現在、家庭から排出される生ごみは他の可燃ごみと一緒に収集され、出雲エネルギーセン

ターで処理されている。今後は、モデル地域において、生ごみの分別収集によるたい肥化利

用等を行うため、既存のシステムや民間活力などを活用し、たい肥化施設へ効率的に収集す

るシステムを構築する。

その他、事業系の食品廃棄物については、自己搬入あるいは専門業者へ委託するなど民間

活力を活用したたい肥化施設への収集システムを検討する。

b.たい肥化施設整備・たい肥化

既存施設を活用してたい肥化を進めるとともに、民間活力を活用して新たなたい肥化施設

を整備する等、良質なたい肥の生産拡大を図る。

c.生産したたい肥の供給先の確保

原料の安全性が確認されている優良なたい肥は、JAいずも等と連携し、農業用たい肥と

して市内の農家に供給する。

d.さらなる循環利用システム構築への展望

将来的には、たい肥化施設で生産したたい肥の供給先として、耕作放棄地や遊休地等を活

用した資源作物の栽培など、さらなる循環利用システムの構築を目指し検討を進める。

例えば、資源作物からバイオエタノールを製造し、エタノール混合ガソリンとして利用す

る方法、またはバイオエタノールを改質し水素を取り出すことができることから、燃料電池

のエネルギー源として利用する方法などが考えられる。いずれも最終的に市民・事業者にエ

ネルギーとして還元することが可能なことから、さらなる循環利用システムの構築が期待で

きる。

しかしながら、事業化にあたっては、技術的課題や需要先の安定確保、さらには事業コス

トなど様々な課題があるため、情報収集や関係者との調整を図りながら、実現の可能性を探

(14)

(2)バイオマスの利活用推進体制

バイオマスの利活用は、学識経験者、バイオマスを産出・利用する産業関係者、環境、地

域住民、関係行政機関等の代表者からなる「バイオマスタウン推進協議会」を設置し、十分

な論議を行って具体的推進を図る。

また、「バイオマス利活用推進会議(庁内関係部局)」を設置し、推進協議会や庁内関係

部局との調整を行うとともに、市民、経済関係団体、関係諸機関等との調整を図るほか、バ

イオマス利活用に関する情報収集等を行う。

【推進体制図】

バイオマスタウン推進協議会

(学識経験者、産業・環境・地域 住民の代表者、行政機関等)

バイオマス利活用推進会議

(庁内関係部局)

国・県・関係機

地域住民・民間

団体等

農林業・商工業

(15)

(3)取組工程

取 組 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度~

①家畜排せつ物、製材残材、剪定枝、 稲わら等のたい肥化と有機農業への 活用

ⅰ)家畜排せつ物、製材残材、剪

定枝、稲わらのたい肥利用

継続・拡大

ⅱ)事業系食品廃棄物の利活用推

検討 モデル事業の実施 拡大実施

(回収システム等) 結果検証

②廃食用油からBDF変換利用

ⅰ)回収場所の増設、事業系廃食

用油の回収

検討 実施

ⅱ)需要先の確保

検討 実施

③林地残材の利活用

a.木質チップ供給システムの構

システムの検討 システムの構築 本格実施

試験運用 (供給拡大)

b.木質チップ需要体制の構築

ア.公共施設への木質チッップ ボイラの導入

モデル事業の検討 モデル事業の実施 拡大実施

(施設選定等) 結果検証 (導入促進)

イ.農業ハウスへの木質チップ ボイラの導入

モデル事業の検討 試験的導入 本格実施

(関係者との調整等) 結果検証 (導入促進)

ウ.ペレットボイラ、ペレットス トーブの導入について

燃焼機器の普及に合わせ、ペレットの供給体制を整備

c. 木質バイオマスのガス化・水

素製造

実証運転の結果を踏まえ、有効活用

④食品廃棄物のたい肥化利用

a. 収集システムの構築

システムの検討 モデル地区での運用 本格実施

結果検証 (市内全域)

b.たい肥化施設検討・たい肥化

事業化の検討 モデル事業の実施 本格実施

結果検証 (生産量拡大)

c.生産したたい肥の供給先の確保

事業化の検討 モデル事業の実施 本格実施

(関係者との調整等) 結果検証 (供給先拡大)

d.資源作物の栽培の検討

調査・検討

e.バイオエタノールの製造の検

調査・検討

f.バイオエタノールの利用の検

(16)

7.バイオマスタウン構想の利活用目標及び実施により期待される効果

(1)利活用目標

バイオマス

賦存量

変換・処理方法

仕向量

利用・販売

利用率(%)

〔炭素換算〕 湿潤量

(t/年)

炭素換算

(t/年)

湿潤量

(t/年)

炭素換算

(t/年)

(廃棄物系) 189,522 16,461 189,105 16,163 98.2

家畜排せつ物 88,722 5,294 たい肥化 88,722 5,294

自家消費、農家、 事業者

100.0

食品廃棄物

(一般系)

14,646 647

焼却

(廃棄物発電)

14,280 631 自家消費、

売電(近隣施設・中電)

100.0 モデル地域での

たい肥化

366 16 畜産農家、農家、 市民、事業者

食品廃棄物

(事業系)

549 24 たい肥化、飼料化、 油脂製品化

549 24 畜産農家、農家、 市民、事業者

100.0

廃食用油 489 349

BDF化、飼料化、 油脂製品化

72 51

市バス、公用車、 市民、事業者 事業者、畜産農家

14.6

製材残材 3,769 840

敷料、

熱変換(チップ化・薪) 、たい肥化

3,769 840 畜産農家、事業者、

市民

100.0

建設発生木材 4,318 1,901

熱 変 換 ( チッ プ化 )、 たい肥化、炭化

4,318 1,901 農家、事業者 100.0

剪定枝

(街路、公園)

119 27 たい肥化、 熱変換(チップ化)

119 27 農家、事業者 100.0

刈草

(道路、河川)

308 25 たい肥化、飼料化 焼却(廃棄物発電)

308 25 畜産農家、農家 100.0

下水・し尿汚泥 76,602 7,354

たい肥化、 コンポスト化 製品化(焼却して粘土成 分の代用品)

76,602 7,354 農家、市民、

事業者

100.0

(未利用) 24,625 6,748 10,643 2,892 42.9

林地残材 3,925 874

熱 変 換(チ ッ プ 化 ・ ペレット化・薪・ ガス化)

1,626 362

熱供給

(温浴施設・農業ハウ ス・市民)

41.4

果樹剪定枝 817 182 たい肥化 817 182 農家 100.0

稲わら 16,348 4,680

敷料、飼料化、 たい肥化

4,904 1,404 農家 30.0

もみがら 3,535 1,012

敷料、たい肥化、 農業資材

(17)

出雲市バイオマス利活用目標(フロー図)

バイオマス

変換・処理方法

利用方法(需要先)

未利用バイオマス

廃棄物系バイオマス マテリアル利用

家畜排せつ物

食品廃棄物

廃食用油

刈草 剪定枝 建設発生木材

果樹剪定枝 林地残材 下水・し尿汚泥

稲わら

たい肥化

(家畜敷料)

製品原料

(油脂製品・調湿 材・建設資材)

エネルギー利用 飼料化

廃棄物発電

直接燃焼

(チップ化・ ペレット化・薪)

バイオディーゼル

燃料(BDF)化

ガス化 製材残材

公用車等への利用 エネルギー利用

公共施設

温浴施設

果樹ハウス 等 販売(商品化) 農地還元(有機農業)

畜産利用

売電

(18)

(2)期待される効果

①経済的効果

バイオマス利活用の取組の拡大や、これまで廃棄物としていたものや未利用とされていた

バイオマスを新たな資源として利活用することにより、地域における新たな産業の創出、事

業の拡大、雇用の創出、農林業の振興、出雲ブランドの定着、バイオマス利用施設でのコス

ト削減等の効果が期待でき、地域経済の活性化につながる。

■家畜排せつ物等のバイオマスから良質なたい肥を製造し有機農業に利用することで、安全

な農産物を市民に供給することができる。安全安心という農作物の付加価値向上により、

農業者所得の向上が期待できる。これにより、地産地消の循環システムが確立でき、農家

の生産意欲の向上や経営安定化、新規就農者を含めた担い手の育成、耕畜連携の推進、更

には食育の推進や農畜産物の出雲ブランド化の促進にもつながる。

■林地残材の利用が進むと、間伐林の林相が改善し、次回の間伐や主伐の作業性を向上させ

るだけでなく、山林保全が進み災害防止にもつながる。そして、林地残材の需要が確立さ

れれば、林業の振興につながり、担い手の育成にも寄与できる。また、林地残材の搬出、

チップ化、ボイラ施設への搬入などの作業が恒常化し、地域の雇用の拡大をはじめ地域経

済の活性化につながる。

■熱需要施設へのチップボイラ導入により、燃料費の削減効果が得られる。これは、初期投

資の償還が終わればさらに大きな削減効果となり、施設運営の経済的な支援となる。

■出雲エネルギーセンターでの水分を多く含む生ごみの処理を減らすことで、助燃燃料費の

使用を減らすことができるとともに廃棄物の単位熱量が大きくなり、発電効率が高くなる

ことが期待できる。

■本市は、出雲大社をはじめとする貴重な歴史・文化資源と豊かな自然資源を活かした観光

交流都市を目指しており、バイオマスの利活用による「環境にやさしい出雲市」の実現は、

本市の更なるイメージアップと社会的認知度の向上につながる。

②環境的効果

バイオマスタウンを推進していくことで、地域での化石資源由来のエネルギーや製品の使

用量を減少させ、それによりCO

排出量を削減することにつながる。また、地域で排出す

る廃棄物の循環利用を促進することができる。これにより「低炭素型の出雲市」、「循環型

の出雲市」の実現に寄与できる。

また、バイオマスに関する普及啓発を積極的に進め、市民がバイオマスに関する理解を深

め、また、バイオマスタウン推進の取組に参加することで環境意識の向上につながる。

■出雲エネルギーセンターにおいて水分を多く含む生ごみの処理を減らすことで、助燃燃料

の使用量及びCO

排出量の削減が可能となる。

■廃食用油からのBDF利用量の増加や、熱需要施設への木質チップボイラ導入により、化

石燃料の使用量及びCO2排出量の削減が可能となる。

■熱需要施設へのチップボイラ導入は、これまでの化石燃料の使用が削減されカーボンニュ

ートラルな燃料に変わるため、大幅なCO2削減効果が得られる。さらに、CO2国内クレ

ジット制度(※)に加わることで、CO2排出権の取引が可能になる。

(19)

■「廃食用油の回収」や「燃えるごみの分別収集」への参加を促進することにより、市民の

環境意識の向上につながる。

また、温浴施設等へ木質チップボイラを導入することにより、施設利用者のバイオマスに

対する関心が高まり、環境意識の向上を図ることができる。

■バイオマス利活用の取組やバイオマスに関する積極的な情報発信を行うことで、市民がバ

イオマスの利活用に触れる機会が増えるとともに、学校における環境学習の推進に寄与で

(20)

8.対象地域における関係者を含めたこれまでの検討状況

新出雲市が誕生した平成 17 年、市民、各種団体の代表者等で構成する「出雲市総合開発審

議会」から「出雲市総合振興計画(21世紀出雲のグランドデザイン)」の答申を受けた。合併

後 10 年のまちづくりの方向性と将来像を描いたこの総合振興計画において、新エネルギーの

開発・利用促進やリサイ クルの推進等による循環 型社会構築の取組を市の 重点施策と位置づ

け、市、市民、事業者が協働して取り組むこととしている。

平成19年3月、環境に関する施策を総合的、計画的に推進するため「出雲市環境基本計画」

を策定し、その推進にあたっては、学識経験者、各種団体、市民代表者等で構成する「出雲市

環境審議会」を中心とした取組を行っている。この計画では、環境と経済の好循環の推進を掲

げ、リサイクルの推進やバイオマスの利活用を促進することとしている。

また、平成 20年2月には、「出雲市次世代エネルギーパーク整備計画」について、学識経

験者、経済・環境関係団体、新エネルギー関係事業者、市民代表等で構成された検討委員会か

ら答申を受け、同年6月に国の認定を受けた。

この計画は、市民や本市を訪れる人が、市内に点在する新エネルギーに関する施設を実際に

見て触れることにより、今後のエネルギーのあり方や環境問題についての知識を得たり、理解

を深めることを目的とするものであり、策定を機に、バイオマスを含む新エネルギーへの理解

の増進や環境意識の醸成に向けた取組を展開している。

こうした中、本市のバイオマスの現状を把握し、その利活用方法や取組工程及び目標等を検

討し、総合的な利活用システム等の構築を目指す、「出雲市バイオマスタウン構想」の策定に

至った。策定にあたり、学識経験者、経済関係団体、バイオマス産出・利用事業者、市民代表

者等で構成する「出雲市バイオマスタウン構想検討委員会」を設置し、利活用方策を検討した。

以下に、検討委員会での検討経過を示す。

〔検討経過〕

検討委員会 開催日 内 容

第1回 平成21年12月24日

・検討委員会の設置、委員長及び副委員長の選出

・事業概要及びスケジュール等について

・バイオマスタウン構想の骨子について

第2回 平成22年1月26日

・利活用計画作成のプロセス等について

・他市町の事例について

・バイオマス賦存量及び利用の現状について

・利活用方針について

第3回 平成22年3月3日

・バイオマス利活用方策及び目標値について

・推進体制について

・取組工程等について

(21)

9.地域のバイオマス賦存量及び現在の利用状況

バイオマス

賦存量

変換・処理方法

仕向量

利用・販売

利用率(%)

〔炭素換算〕

湿潤量 (t/年)

炭素換算 (t/年)

湿潤量 (t/年)

炭素換算 (t/年)

(廃棄物系)

189,522 16,461 188,188 15,961 97.0

家畜排せつ物

88,722 5,294 たい肥化 88,722 5,294 自家消費、農家、事業者 100.0

食品廃棄物 (一般系)

14,646 647 焼却(廃棄物発電) 14,646 647

自家消費、

売電(近隣施設・中電)

100.0

食品廃棄物 (事業系)

549 24 たい肥化、飼料化、 油脂製品化

237 10 畜産農家、農家、市民、 事業者

41.7

廃食用油 489 349

BDF化

飼料化、油脂製品化

59 42 市バス、公用車 事業者、畜産農家

12.0

製材残材 3,769 840

敷料、熱変換(チップ 化・薪)、たい肥化

3,391 755

畜産農家、事業者、市民

89.9 敷料

1,469t〔327t-C〕 チップ・燃料

1,922t〔428t-C〕

建設発生木材

4,318 1,901 熱変換(チップ化)、 たい肥化、炭化

4,104 1,807 農家、事業者 95.1

剪定枝 (街路、公園)

119 27 たい肥化 119 27 畜産農家、農家、市民 100.0

刈草

(道路、河川)

308 25 たい肥化、飼料化 焼却(廃棄物発電)

308 25

畜産農家、自家消費、 売電(近隣施設・中電)

100.0 たい肥・飼料

127t〔10t-C〕 廃棄物発電

181t〔15t-C〕

下水・し尿汚泥 76,602 7,354

たい肥化、 コンポスト化 製品化(焼却して粘土成 分の代用品)

76,602 7,354

農家、市民 事業者

100.0 肥料・コンポスト化

63,638t〔6,109t-C〕

製品化

12,964t〔1,245t-C〕

(未利用) 24,625 6,748 6,847 1,910 28.3

林地残材

3,925 874 0 -

※利用間伐における 利用残材

1,021t/年〔227t-C/年〕

0.0

果樹剪定枝

817 182 たい肥化 803 179 農家 98.4

稲わら 16,348 4,680

敷料、飼料化、たい 肥化

2,748 787 農家 16.8

もみがら

3,535 1,012 敷料、たい肥化、 農業資材

(22)

10.地域のこれまでのバイオマス利活用の取組状況

(1)経緯

①廃食用油の回収・BDF化

平成 13 年度から、平田地域(旧平田市)では廃食用油を回収・精製して市バスの燃料と

して利用しており、合併後、この取組を全市に広げて実施している。現在では、市役所やコ

ミュニティセンター等、市内 48 箇所に設置したリサイクルステーションで廃食用油を回収

し、精製したBDFは市バスや公用車(トラック)、合計11台に利用している。

なお、本市では「出雲市環境基本計画(平成18年度策定)」において、廃食用油回収によ

るBDF製造量(回収量と同量)を平成23年度には60,000L/年、平成28年度には80,000L/

年とすることを目標に掲げており、計画策定時(平成 17 年度)28,230L/年であった回収量

は、平成20年度には34,200L/年に増加している。

②バイオエタノール製造に向けた研究

平成 19 年度、本市及びJAいずもによって発足した「出雲市バイオエタノール研究会」

において、休耕田を活用した多収穫米の試験栽培やバイオエタノールの製造に関する研究を

行った。原料となる多収穫米については、コストを抑え収穫量をあげる栽培技術を確立する

ため、新たに立ち上がった「飼料用米利活用研究会」で栽培試験を継続して取り組んでいる。

製造設備等については、採算性をはじめ、バイオエタノールの利用方法やバイオエタノール

の製造過程で発生するCO2などの課題が提起された。

③廃棄物発電の実施

平成 15 年度に完成した「出雲エネルギーセンター」では、ごみ焼却時に発生する熱を利

用して発電を行い、施設内や近隣施設(島根県花振興センター・花ふれあい公園(しまね花

の郷))への電力供給、余剰電力の売電を行っている。

なお、焼却時の熱は16%程度が電気になっているにすぎず、残る84%は放熱されている。

可燃ごみとして処理している生ごみは水分が多く、助燃用の燃料が必要となるため、できれ

ば焼却処理せず、たい肥利用など別の処理方法を検討することが課題となっている。

④木質バイオマスのガス化発電

水素社会の到来を視野に入れ、平成16年度から産官学が連携し「出雲國水素社会プロジ

ェクト」に取り組んでいる。プロジェクトのひとつとして、民間事業者により「出雲バイ

オマスエネルギープラント」が建設され、木質バイオマスのガス化技術を利用した発電、

水素製造を行うための実証等が行われている。

試験運転段階において、エンジニアリング上の問題等により、生成ガスの量、発電量が

目標値まで達せず、現時点で定常運転に至っていないが、先進的な取組としての評価も高

く、今後、本プラントの研究会(学識経験者等で組織)からの評価・提言に基づくプラン

(23)

⑤食品廃棄物、下水・し尿汚泥、刈草のたい肥化

平成16年度より、出雲学校給食センターで発生した食品残さや、し尿、浄化槽汚泥は、

汚泥等処理施設「出雲環境センター」でたい肥化を行っており、そのたい肥(愛称:出雲

ゆうきコンポ)は同センターが販売している。

なお、学校給食センターから排出される食品残さは、たい肥化の妨げとなる混入物がほ

とんどなく、たい肥化資源には適しているが、現在、出雲学校給食センター以外の5箇所

(平田・佐田・多伎・湖陵・大社)のセンターから発生する食品残さは、出雲環境センタ

ーの処理能力を超えることなどから、出雲エネルギーセンターで焼却処分されている。

また、 平田 及び 大社 学校 給食セ ンタ ーの 老朽 化に 伴い新 設さ れる 新東 部給 食セン ター

(仮称)では、年間約40tの食品残さの発生が見込まれており、バイオマスとしての利活

用が課題となっている。

その他にも、市では公共施設及び市道等で発生した刈草のたい肥化事業を行っており、

製造したたい肥は公共施設の樹木等への肥料として活用されている。

⑥家畜排せつ物等のたい肥化

佐田総合資源リサイクル施設(㈲エコプラント佐田)では、家畜排せつ物、製材残材及

び出雲エネルギーセンターに持ち込まれた剪定枝等を原料として、たい肥の生産を行って

おり、たい肥は田や畑に施用され、有機栽培に供されている。

⑦製材残材、建設発生木材のチップ化

市内の民間事業者により、製材残材、建設発生木材がチップに加工され、合板工場など

に燃料として供給されている。合板工場では、製品の乾燥や自家発電用の熱エネルギーと

して利用されている。

⑧建設発生木材の炭化

市内の民間事業者により、建設廃材等が収集され、炭化して「調湿材」として商品化・

販売されている。

⑨林地残材

現状では需要がなく、また、販売ルートも確立されていないため搬出されず、そのほとん

どが林地に放置されている。

森林組合及び林業事業者は、中国電力三隅火力発電所で実施予定の木質バイオマス混焼実

証事業に、林地残材からのチップを供給する計画を立てている。ここでの林地残材は、広葉

樹の主伐から発生するもの、利用間伐から発生するものが対象となっている。

⑩稲わら、もみがらの利用

稲わらは、一部、乳用牛や肉用牛などの飼料や牛舎の家畜敷料として利用され、多くは

稲刈り時にコンバインで裁断され、農地に還元(鋤き込み)されている。

(24)

(2)推進体制

①出雲市環境審議会

平成19年3月に環境に関する施策を総合的、計画的に推進するため「出雲市環境基本計

画」を策定し、市民、JAいずも・出雲商工会議所などの経済団体代表、学識経験者等で

構成する「出雲市環境審議会」を中心として、出雲エネルギーセンターにおけるサーマル

リサイクル(廃棄物から熱エネルギーを回収し利用すること)や、廃食用油によるBDF

の普及推進、し尿・浄化槽汚泥処理施設における環境に配慮した汚泥処理の推進など、バ

イオマスの利活用推進に向けた取組を行っている。

②出雲市バイオエタノール研究会

将来的なエネルギーの地産地消、農業の活性化を目的として、バイオエタノールの製造

事業の可能性を探るため、平成19年度に市及びJAいずもにより「出雲市バイオエタノー

ル研究会」を設置し、休耕田を活用した多収穫米の試験栽培やバイオエタノールの製造に

関する情報収集を行うとともに、事業化の可能性を探った。

③出雲市環境と経済の好循環のまちづくり協議会

二酸化炭素の排出削減等を通じた環境保全と雇用創出等による経済活性化を同時に推進

するため、市民団体代表、JAいずも・出雲地区森林組合などの経済団体代表、バイオマ

ス発電事業関連事業者及び出雲市で構成する「出雲市環境と経済の好循環のまちづくり協

議会」を設置し、地域資源(木質バイオマス)の有効利用による産業振興策、環境保全対

(25)

(3)関連事業・計画

①環境と経済の好循環のまちモデル事業(平成16~18年度)※平成16年度環境省選定 委託事業(ソフト事業)

実施年度:平成16~17年度

事業内容:地域資源(木質バイオマス)の有効利用による産業振興、環境保全対策等の

研究、普及啓発事業など

交付金事業(ハード事業)

実施年度:平成16~19年度

事業内容:木質バイオマスガス化発電施設の建設

(生成ガスを燃料とする発電(自家消費及び売電)を計画)

②地域新エネルギービジョン

旧多伎町地域新エネルギービジョン(平成12年度)

旧佐田町地域新エネルギービジョン(平成14年度)

旧出雲市地域新エネルギービジョン(平成15年度)

旧平田市地域新エネルギービジョン(平成15年度)

旧佐田町地域新エネルギービジョン〔木質バイオマスエネルギー活用調査〕(平成16年度)

③出雲市環境基本計画(平成18年度)

④出雲市次世代エネルギーパーク整備計画(平成19年度)※平成20年度、経済産業省認定

(26)

(4)既存施設

①BDF精製プラント

処理方法:アルカリ触媒法(自然沈殿型)

能 力:400L/日

精 製 量:34,200L/年(平成20年度実績)

②出雲エネルギーセンター【廃棄物発電施設】

対象ごみ:可燃ごみ

規 模:218t(109t/日×2炉) 炉運転時間:24時間/日

炉 型 式:キルン式ガス化炉+縦型旋回溶融炉方式

発電能力:3,690kW

発 電 量:18,918,820kWh(平成20年度実績)

うち、廃棄物発電(蒸気タービン発電)17,328,610kWh/年

③出雲バイオマスエネルギープラント【木質バイオマスガス化発電施設】

発電能力 :47kw

原 料 :木材、 樹皮 等 1.4t/日(60kg/h)、520t/

年 …水分30%基準(湿)

精製ガス量:1,500Nm

3/

日(59Nm 3/h

発電設備 :ガスエンジン発電方式

ガス化プロセス:段階的改良法(熱分解+スチーム改質)

④出雲環境センター【たい肥化施設】

処理能力:193kL/日(し尿:104kL/日+浄化槽汚泥89kL/日)

生ごみ受入量:900kg/日

処理方式:前処理/細目スクリーン+スクリュープレス

水処理/膜分離高負荷脱窒素処理方式

高度処理/凝集膜分離+活性炭吸着

汚泥資源化/脱水+たい肥化

臭気処理/生物脱臭、薬品洗浄、活性炭吸着

処 理 量:63,638t/年、全てたい肥化を行い製品量は512t/年(平成20年度実績)

⑤エコプラント佐田【たい肥化施設】

処理能力:家畜糞尿(搾乳牛、和牛、育成牛) 500頭

年間たい肥投入量:6,732t

年間副資材投入量:1,606t(剪定枝、バーク等)

年間たい肥生産量:1,369t

処理方式:ロータリー式撹拌

(27)

ス利活

用イメ

ジ(全体

参照

関連したドキュメント

平成 28(2016)年 5 ⽉には「地球温暖化対策計画」が閣議決定され、中期⽬標として「2030 年度に おいて、2013

(平成 28 年度)と推計され ているが、農林水産省の調査 報告 14 によると、フードバン ク 45 団体の食品取扱量の合 計は 4339.5 トン (平成

 国によると、日本で1年間に発生し た食品ロスは約 643 万トン(平成 28 年度)と推計されており、この量は 国連世界食糧計画( WFP )による食 糧援助量(約

2011 (平成 23 )年度、 2013 (平成 25 )年度及び 2014 (平成 26 )年度には、 VOC

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